伝統の技術

永く受け継いだ技術。京職人としてのこだわりを少しだけご紹介いたします。
表具はたくさんの工程を経て完成します。
なかなか知られることの少ないこの工程をご覧頂くことで、表具への関心を高めていただければと思います。

金箔押し

寺などで、金色に輝く内陣(ご本尊を安置してある奥の間) をご覧になったことがあると思います。
まばゆい光によって 極楽浄土を感じるために考えられたといわれています。
金と聞くと「ゴールド」といういわゆる「純金」を思い出されるかもしれませんが、「金箔」は穏やかで柔らかい輝きが魅力です。
輝きを放ちつつもなぜか心が落ち着くような・・・。  以前、下関のあるお寺で見事な金紙張りに出会いました。
3代目・橋本雙太郎が70年前に手がけたものだとわかったときは、 うれしく誇らしい気持ちになったものです。
弊社では、初代からお寺の仕事を承ることが多く、この「箔押し」の技術も受け継がれています。

寺院の金紙張り 表具 京都

寺院の金箔張り

金紙張りを施工する上で、弊社の最大の特徴は、本金紙の製作と現場施工の両方を自社にて行うことが出来ることです。  金紙の製作と現場施工が別の場合は、トラブルが起きた際に責任の所在が不明瞭になることがあります。  こうしたトラブルを避ける為にも自社にて製作、施工を行っております。

寺院の金箔貼り 京表具 tenmple wall

断切5.2寸 本金紙

本金紙張りに使用する金箔は、縁付(えんつき)の本金箔を使用いたします。
しかし、昨今の経済状況などを鑑みますと、縁付の本金紙を使用することが難しい状況ということがあるかと思われます。
弊社では、そのようなお客様が伝統的な本金箔押しの金紙張りを諦められ、工業製品の金紙を 御使用になることが大変残念に感じておりました。
それを解消すべく、断切箔の大箔を開発いたしました。
通常、縁付箔は128mm角の箔を 使用いたしますが、断切箔の大箔は157mm角の大きさです。
これにより、面積当たりの金箔の枚数が減少し、コストを下げることが出来ました。
金箔以外は縁付箔の金紙と変わりませんので、経年変化に対しても従来の金紙と同様に考える ことが出来ます。

断切5・2寸本金紙 京表具 寺院
断切5・2寸本金紙 京表具 寺院

本金紙へのこだわり

弊社では、本金紙を製作する際の材料についても徹底的にこだわっています。
金箔は、金沢から仕入れておりますが、金箔を打っている職人さんのお宅へ足を運び、どのように金箔が製造されているかという事の確認と、打ち合わせを行っております。
金箔を押すベースの鳥の子紙についても、越前の紙漉きの工房へ足を運び、鳥の子紙の製造状況の確認と打ち合わせを行っております。
これからも、より良い製品作りを目指し努力を重ねていきます。

本金紙 表具 hyogu
本金紙 表具 hyogu

現場施工作業の流れ
(下地がベニヤ板の場合)

flow_jp_banner

以上が大まかな作業の流れです。 これ以外にも、下地が特殊な場合でも対応可能です。 通常の場合は、ベニヤ下地をお勧めしております。

金箔押しの工程

① 線引き

鳥の子紙※1に箔を押す寸法の線を引きます。全ての基礎になりますので、きっちり直角になるように枠を引きます。

※1・・・鳥の子紙
雁皮(ガンピ)や三椏(ミツマタ)の混合繊維で漉いた、光沢のある柔軟で緻密な和紙。鶏卵の色に似た淡黄色で、強く耐久性があり、墨の映りがよいことから、日本画の紙としても使われます。 弊社では、漉き元にて特別に選別した手漉きの鳥の子紙を使用しています。

次へ

② 仮貼り

線を引いた鳥の子紙を板にはります。せっかく直角に引いた枠を崩さないように上下左右均等に張ります。

次へ

③ 地引き

仮貼りが乾燥した後に、鳥の子紙に礬水を塗ります。塗っては乾燥させる作業を最低7回繰り返します。
気候に左右されやすいので、回数は慎重に決定します。
回数が少ないと金箔がはがれる原因になり、多いと金箔を押した時に表面にいやな光沢が出ます。

金箔押し 地引き 京表具
次へ

④ 油つけ

箔紙にバレンで油をつけます。
油が少ないと箔押しのときに紙からはがれ、油が多いと箔押しのときにうまく箔紙がはがれません。
微妙な油加減が必要となります。

京表具 油つけ 金箔押し
次へ

⑤ 箔間紙をめくり、箔紙を箔にのせる

竹ばさみを使いながら箔の上の「箔間紙」をそっとめくります。

箔間紙 京表具 金箔押し
次へ

⑥ 箔紙を箔に密着させる

箔をきれいに伸ばしつつ、箔紙につけます。
この時に箔にしわをいれると押した時にしわが残ります。

微妙な力加減が必要です。
金箔※2は0.0001ミリの厚さ、ちょっとした息でも飛んでしまいます。

※2金箔 金箔には縁付(えんつき)と断切(たちきり)があります。当社では、落ちついた輝きを持ち、非常に薄い仕上がりになるため箔と箔の境がわかりにくい「縁付」を使用しています。

箔紙 京表具 金箔押し
次へ

⑦ 箔と箔紙を合わせたものを移す箔押し

「地」をひいた鳥の子紙にうすい礬水をひきます。
鳥の子の「地」を溶かします。礬水の量が多いと箔の表面に礬水がまわり、少ないと接着しません。
絶妙なタイミングが必要です。

京表具 箔紙 金箔押し
次へ

⑧ つくらい・とめ

押し上がった金紙を乾燥させた後、真綿で拭き上げます。

箔にある小さな穴などをつくろいます。箔が二重に重ならないように細心の注意をくばります。

つくらいをした後、再度真綿で拭き上げます。

最後に箔押しの時よりさらにうすい礬水を表面に塗ります。表面の保護です。

寺院の金紙張り 表具 京都
次へ

⑨ 仕上がった金紙を隅々まで点検する

しわが入っていないか、箔が二重に重なっていないか、剥がれがないかを隅々まで丹念に点検して作業終了です。

寺院の金紙張り 表具 京都